ヨーロッパのパンはなぜ硬い?

ヨーロッパに旅行に行くと「パンが硬すぎる」と感じることがあります。特に、フランス、ドイツ、イタリアのパンは日本のパンに比べて硬く、パンの種類によっては石より硬いと感じることがあります。
なぜ、ヨーロッパの一部の国では硬いパンが食べられているのでしょうか。
今回は1000種類以上のパンがあり、2014年に「パン文化」がユネスコの無形文化遺産に登録されるほど、パン文化が盛んなドイツのパンを参考に考えてみたいと思います。
なぜパンが硬いのか
ドイツのパンが硬い理由の1つに、パンの原料が小麦粉ではなくライ麦であることが考えられます。グルテンはパン生地に弾力、粘りを与え、ふっくらとしたパンになりますが、ライ麦には、グルテンが含まれていないため、パンが硬くなります。
そもそも、ドイツではなぜ、パンの原料としてライ麦が使われるのでしょうか。
その理由として、ライ麦は小麦に比べて低温でも生育が可能な耐寒性に優れていることが挙げられます。パンが褐色になるのはライ麦に由来し、また、イーストではなく、ライ麦を原料に作られるライサワーと呼ばれる天然酵母を使用することで酸味を持ちます。
これが、日本人には馴染みの少ない、褐色で硬く酸味があるライ麦パンの特徴になっています。
硬く食べにくいと思われがちのライ麦パンですが栄養価は非常に高いです。ライ麦の含有率が高いほど薄くスライスし、バターなどの乳製品を塗ることで酸味が抑えられます。
また、日本のサンドウィッチとは異なりますが、パンの上にハム、ソーセージ、チーズ、野菜などを乗せて食べられます。
柔らかいパンは食べられないのか
イギリスでは、日本と同じように小麦粉から作られた柔らかいパンが食べられています。
イギリスには1つの皿に、卵、ベーコン、ソーセージ、トマト、キノコ、豆類などが乗った「イングリッシュ・ブレックファースト」と呼ばれる料理を食べる文化があり、この食事には必ず言っていいほど三角形に切られたトーストが付いてきます。
ただ、最近の健康志向により、イギリスでも繊維、ビタミンなどが豊富なライ麦パンを食べる人が増えているようです。
日本のパン食文化の始まり
日本へのパンの伝来はかなり古く、1543年に種子島にポルトガル人が漂着した際に鉄砲だけではなく、キリスト教と共にパンが伝来したとされています。
当時の日本にはパンを食べる文化は定着せず、日本にやってきた貿易商、宣教師たちが食べる程度だったようですが、1633年以降に複数回発出された鎖国令によりパン文化は遠ざかりました。
明治時代になり外国人居留地、西洋料理店などで食べられていましたが、当時は高級品、贅沢品でした。その後、日本の食卓にパン食文化が根付いたのは、第二次世界大戦後、連合軍から救援物資として脱脂粉乳、小麦粉が大量に得られたことが大きいようです。
小麦粉のことを「メリケン粉」と呼ぶのは、小麦粉がアメリカから輸入されていたことに由来します。
ラピュタパンとは、「天空の城ラピュタ」に登場するパンの上に目玉焼きを乗せた料理の俗称です。トーストの上に目玉焼きを乗せるだけで簡単に再現できるため、多くの人が1度は食べたことがある料理だと思います。
「天空の城ラピュタ」はヨーロッパをモデルにしており、映画内では明確な描写はありませんが、実際はライ麦パンだった可能性があります。
まとめ
パンはヨーロッパ、中東、アフリカ、アジアなどの国に広がり、地域ごとの気象条件などにより使用される穀物、発酵技術、調理方法などが異なり、独自の発展を遂げています。
パンは単なる食事の一部ではなく、それぞれの国の文化、伝統などを反映している存在と言えます。
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