クリスマスを彩るポインセチア

クリスマスが近づくと店舗のディスプレイなどでポインセチアをよく見かけます。
クリスマスによく見かけることから、冬の植物と思われがちですが、ポインセチアはメキシコ原産で平均気温は25度程度と温暖な気候を好み、寒すぎると枯れる恐れがあります。
そんな寒さが苦手なポインセチアがどのような過程を経て「クリスマスの花」と呼ばれるようになったか、その歴史を紐解きたいと思います。
ポインセチアはどんな植物?
ポインセチアはトウダイグサ科トウダイグサ属のメキシコ原産の植物です。原産地は1年を通して平均気温が25度程度と温暖なため、ポインセチアには耐寒性がありません。そのため、気温が10度以下で生育が止まり、5度以下になると枯れる可能性が高く、日本の気候では1年間を通して10度を下回らない沖縄県、小笠原諸島、奄美群島など以外では地植えでの生育は困難とされています。
適切な管理を行えば、沖縄県以外でも地植えで越冬できる場合があります。特に、
ポインセチアの赤色の花(花弁)と思われている部分は、花ではなく葉の1種で「苞葉」と呼ばれます。
ポインセチアの実際の花は、赤色の葉の中央に集まっている小さい黄色の部分で、日照時間が12時間以下で、一定期間の低温にさらされる状態が6週間程度続くと花芽ができ、開花します。これは秋や冬に花を咲かせる短日植物の特徴です。
クリスマスの花になった理由
ポインセチアが「クリスマスの花」になったのは1820年代にメキシコに派遣された初代特命全権公使だったアメリカ人外交官のジョエル・ロバーツ・ポインセット(Joel Roberts Poinsett)の影響が大きいと考えられています。彼が特命全権公使の任期が終わる1825年にメキシコのタスコ・デ・アラルコンを訪れた際に、赤色の花を咲かせるポインセチアを発見し、アメリカに持ち帰りました。
鮮やかな赤色と緑色の色彩とクリスマス時期に咲く特性から、植物学者や園芸愛好家の間で人気を博したとされています。ポインセチアの名前は、ジョエル・ロバーツ・ポインセットに由来し、彼の死後に正式に命名されました。
ポインセチアに魅せられた園芸家たち
苞葉の形状が「ベツレヘムの星」を連想させ、苞葉が赤色、葉が緑色とクリスマスカラーだったこともあり、アメリカでは古くからクリスマス時期に人気がある植物として認知されていましたが、1960年代に入ると園芸家のポール・エッケ(Paul Ecke Ranch)が短日条件下で開花を制御する方法を確立、色彩や形状の品種改良にも力を入れ、現在のポインセチアの多種多様な品種の基礎を作りました。
ジョエル・ロバーツ・ポインセットが発見し、ポール・エッケの長年の研究によって短日処理による開花調節技術が確立されました。また、数多くの園芸家による品種改良によって、赤色だけではなく、白色、ピンク色の苞葉を持つ品種が生み出されました。ポインセチアが持つ美しさに魅せられた多くの人たちによって「クリスマスの花」とのイメージを定着させ、商業栽培を成功に導きました。
冬に流通するポインセチア
様々な園芸家によって品種改良が行われていますが、耐寒性を持つ品種はまだ生み出されておらず、現在も管理された温室で栽培されています。温度、光量、水量などを厳密に管理することで、クリスマス時期に開花させるように調整することが可能になっています。
ポインセチアは、アメリカでのクリスマス時期の商業的成功のはるか以前から、スペイン語でクリスマスイブを意味する「Noche Buena」と呼ばれ、クリスマス時期に開花する植物として認知されていました。
また、アメリカでの商業的成功を踏まえ、現在はメキシコの園芸業者などによって栽培され、クリスマス時期の装飾だけではなく、観光者向けの商品としても利用され、国外への輸出も盛んに行われています。
まとめ
ジョエル・ロバーツ・ポインセットの発見に始まり、ポール・エッケの長年の研究、多くの園芸家による品種改良の結果、寒さに弱いポインセチアがクリスマスを象徴に花になりました。
ポインセチアが「クリスマスの花」として世界中に広まったのは、ポインセチアが持つ美しさ、その美しさに魅せられた数多くの人たちの創意工夫が結びついた結果と言えるでしょう。
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