日本人と桜の関係

桜は日本を象徴する花だと考える方は多いと思います。
桜は寒い冬が終わり暖かい春の訪れを告げるだけではなく、不安や希望に満ちた卒業式、入学式と桜の開花時期が重なることで、人々の記憶により強く残り、日本人の人生のタイミングを象徴する花になっているのではないでしょうか。。
長い歴史の中で桜が日本の文化にどのように影響し、受け入れられてきたか考えてみたいと思います。
桜は日本の国花?
日本は法律で正式に国花を定めていません。しかし、パスポートには菊が描かれ、2004年に発行された1,000円札の裏面には富士山と共に桜、2024年に発行された5,000円札には藤が描かれています。このことから、日本の文化にとって菊、桜、藤は国を象徴する花として認識されていることが考えられます。
花見の歴史
日本の花見の歴史は非常に古く、奈良時代まで遡ることができます。当時は桜ではなく梅の花を鑑賞していたとされていますが、平安時代に入ると桜を鑑賞する花見が始まったとされています。藤原冬嗣が編纂した「日本後紀」には、812年に嵯峨天皇が神泉苑で開催した「花宴の節」が、現代まで続く花見の起源ではないかと考えられています。
源氏物語にも「葵(あおい)」「花散里(はなちるさと)」などにも「花宴の節」「花見」の様子が描かれています。
貴族の花見から庶民の花見へ
奈良時代、平安時代の花見は貴族の恒例行事として和歌を詠んだり、蹴鞠、騎射(馬に乗りながら弓で的を射る競技)、相撲などを奉納していたと考えられますが、江戸時代に入ると、花見は庶民の間でも広がりました。江戸時代の花見では、現代の花見と同じように桜の木の下で酒や食事を楽しんでいたと考えられます。
江戸時代の花見の様子は、葛飾北斎が描いた「冨嶽三十六景」の「東海道品川御殿山の富士」、歌川広重が描いた「名所江戸百景」の「千駄木団子坂花屋敷」「玉川堤の花見」などで色鮮やかに描かれています。
ソメイヨシノの誕生
ソメイヨシノ(染井吉野)は1860年代後半に江戸の染井村(現在の東京都豊島区)で園芸品種だったエドヒガンザクラとオオシマザクラを交配させて誕生したと考えられています。ソメイヨシノの歴史は2024年で160年程度の比較的新しい品種です。
ソメイヨシノは花が一斉に咲き、花が散った後に葉が出てくる特徴があります。そのため、満開時は色彩が統一されて美しく観賞価値が非常に高い桜と言えます。また、他の桜の品種に比べて成長速度が速く、都市開発や公園整備で利用されたことで、日本中に広がったと考えられます。
ソメイヨシノは美しさ、成長の速さから日本全国に植えられましたが、全ての樹木が同じ遺伝子を持ったクローンです。そのため遺伝子の多様性が乏しく、一度病気が蔓延すると他の樹木にも広がり大規模な損失を被るリスクがあります。このリスクは現在流通しているキャベンディッシュ種のバナナでも同じことが言えます。
また、土壌、気候など条件によっても異なりますが、他の桜の品種に比べて樹齢が60年から80年程度とされ比較的短い特徴があります。都市部では特に、ソメイヨシノの衰弱問題に対応するため、定期的な植え替えや、新たな耐病性のある品種の導入、他の桜の種類との交配による遺伝子多様性の増加などが行われています。
公園管理では、ソメイヨシノの樹木の健康診断を定期的に行い、早期に病害虫の駆除や適切な剪定によって樹木の寿命を延ばす努力が見られます。
河津桜について
河津桜(かわづざくら)は、バラ科サクラ属の落葉高木で、1955年頃に静岡県河津町の河津川沿いで発見されたことに由来して命名されました。河津桜はソメイヨシノと比べて早咲きの桜で開花時期は静岡県河津町で1月下旬から2月上旬頃、関東地方で2月上旬に開花し、花色がソメイヨシノよりも濃い色が特徴です。なお、河津桜はオオシマザクラとカンヒザクラの自然交雑種だと推定されています。
1955年頃に飯田勝美氏が河津川沿いで芽咲いている桜の苗木を偶然発見し、自宅の庭先に植えたものが河津桜の原木です。原木は今でも同じ場所に植えられており、見学することができます。また、その後、勝又光也氏が積極的に増殖活動を行い、河津桜の普及に大きく貢献しています。
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