クリスマスの始まり

毎年12月25日はパーティー、プレゼント、ケーキなど、日本の恒例行事のようになっているクリスマスですが、元来はイエス・キリストの降誕を祝うキリスト教の宗教行事(降誕祭)です。
しかし、新約聖書にはイエス・キリストの降誕日を特定する記述はありません。
外国発祥のクリスマスが、どのように誕生し、現在のような形になったのか考えてみたいと思います。
クリスマスの起源
最初にも述べたように、新約聖書にはイエス・キリストの降誕日を特定する記述がなく、12月25日はイエス・キリストの降誕日ではないとの説が有力です。
クリスマスを12月25日と定めたのは、4世紀頃のローマ教皇リベリウス、またはダマスス1世ではないかと考えられています。また、リベリウスはカトリック教会では聖人とされています。
クリスマスの起源は、古代ローマで12月17日から12月23日にかけて開催されていたサトゥルヌス神を祝う祭りだと考えられていますが、元々この祭りは異教の冬至祭、農神祭だったとの説があります。
異教の行事をキリスト教の行事に置き換えることで、異教徒の改宗を促す狙いがあったのではないかと考えられています。
教会暦では12月24日の日没から12月25日の日没までの期間をクリスマスとしています。
サンタクロースの服が赤色になった理由
サンタクロースのモデルとされる聖ニコラウスは必ずしも赤色の服を着ていたわけではありません。現在のサンタクロースが赤い服を着るイメージが定着したのは、コカ・コーラ社の広告展開に一因がありますが、19世紀後半に活躍した挿絵画家のトーマス・ナストが描くサンタクロースは赤色、白色の服を着ていました。
19世紀後半にトーマス・ナストが白いヒゲをたくわえ、赤色の服を着た恰幅の良いサンタクロースのイメージを創作し、1930年代にコカ・コーラ社がクリスマスの広告キャンペーンの一環として赤色の服を着たサンタクロースを登場させたことで、現在のサンタクロースのイメージが決定づけられました。
クリスマスツリーの歴史
初期のクリスマスではクリスマスツリーはまだ登場していませんでした。クリスマスツリーは6世紀頃に始まった古代ゲルマン民族が行なっていた「ユール(Yule)」と呼ばれる冬至祭に起源があると考えられています。
北欧の冬は厳しく、当時のゲルマン民族は火を起こすには薪が重要だと考え、樹木を信仰の対象にしていました。冬至祭では、生命の象徴である常緑樹に飾り付けを行い、十二夜(Twelfth Night)の間、火を絶やすことがないように薪を燃やし続けていました。
現在では、この風習を見かけることは減りましたが、木を模した「ブッシュ・ド・ノエル」など、形を変えて当時の樹木信仰の歴史を残しています。
現在のクリスマスは、様々な土着信仰、異教の行事を取り込み、現在のような形になったと考えられます。
日本でのクリスマス
クリスマスはキリスト教の宗教行事ですが、日本では独自に解釈され、12月の行事として定着しています。日本には神道の「八百万(やおよろず)の神」という多神教文化が背景にあり、異文化の神を比較的受け入れやすい環境があります。
また、その年の福徳を司る歳徳神、節分の鬼など「来訪神」の概念があり、サンタクロースも来訪神の1人と認識され、祝福、幸福をもたらす行事として自然と取り込まれた可能性があります。
核家族化により最近では減りつつありますが、日本には正月に親族が集まって祝う文化があります。これは特別な日に家族、親族で特別な料理を食べる文化と解釈することができます。
これが日本人の家族観、家庭文化と合致し、宗教行事としての意味合いが薄れ、クリスマスは家族、恋人と過ごす日と解釈され、受け入れられたのかもしれません。
クリスマスの商業化
18世紀後半に始まった産業革命により、19世紀には工業化による大量生産が可能になり、消費文化が拡大しつつありました。それによりこの頃のクリスマス時期には家族が集まり、プレゼントを交換するなどの行事が普及しつつあったとされています。
これは資本主義の拡大期と捉えることができ、商業界ではクリスマスを商業的機会と認識し、現在のクリスマス商戦の始まりと考えられています。
アメリカではクリスマス以外に、2月14日のバレンタインデー、3月、4月頃のイースター、感謝祭の翌日の金曜日に大規模な割引が展開されるブラックフライデー、10月中旬から後半にかけてのハロウィンなど大規模な商業シーズンがありますが、この中で最大の売り上げを記録するのがクリスマスとされています。
まとめ
クリスマスは元来、キリスト教のイエス・キリストの降誕を祝う行事でしたが、現在では家族、恋人など大切な人と一緒に過ごす行事に変化し、キリスト教とは異なる信仰を持つ人々や、非宗教的な人々にも受け入れられる行事となっています。
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